• 2015年12月の研究懇話会

  • 【開 催 日】
    2015年12月 3日(木 ) 15:00~17:00
  • 【開催場所】
    東工大蔵前会館
  • 【講  師】
    杉崎 喬(当会会員)
  • 【題  目】
    「高分子材料物性の測定と活用(2)」
  • 「概要」
  • 今日、プラスチックは包装産業のみならず、自動車、航空機、機械部品,電気電子、建材,機械部品,等あらゆる分野で使用されている。2012年の我が国の生産量か全体で約1,500万トンであり、そのうち五大汎用樹脂と呼ばれるプラスチック(LDPE,HDPE,PVC,PS,PP)は1,000万トンである。

    プラスチックにはこの他にエンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチック呼ばれるものがある。

    また,液晶とエラスストマーについても説明したい。

  • 【講  師】
    小山 武夫(当会会員)
  • 【題  目】
    「高分子の基礎」
  • 「概要」
    • 高分子とは
      1. − 高分子は、分子量が1万以上、‐普通は、数万から数十万、さらに大きな分子
      2. − 高重合体(Polymer)は、単量体(Monomer)が重合したもので、付加重合体は、
        単量体が多数付加的に重合したもの(PE,PP)
        縮合重合体は、重合時に水などの分子を放出して縮合的に重合
      3. − 共重合体は、2種類、または2種類以上の単量体の重合でできたもの
      4. − 無極性高分子(PE,PPなど)の分子間力は、‐van der Waalsの力だけで、分子間力は比較的弱い
      5. − 極性高分子(塩化ビニル、ナイロンなど)の分子間力は、極性により、鎖の間には、無極性よりはるかに大きな力が働き、PEなどより硬いが脆い
      6. − セルローズは、OH基を持っているので、強く結びついている、加熱しても溶解性を示さず、融解前に分解する
    • 分子量と分子量分布
      1. − 合成高分子の分子量は多分散を示す、合成高分子は、同一の組成を持つが異なる分子の混合物であり、その分子量は通常、数平均分子量あるいは重量平均分子量で表される
      2. − 分子量分布は、加工では分子量そのものと同様に重要で、物性面では通常分子量分布が狭いことが望ましいが、加工の容易さから、分子量分布が広いことが有利になる場合も多く、分子量のみならずその分布も用途に応じての設計が必要
      3. − 平均分子量の算出方法には分子1個あたりの平均の分子量として算出される数平均分子量や、重量に重みをつけて計算した重量平均分子量等がある
      4. − 重量平均分子量と数平均分子量の比を分散比と呼び、これが1に近いほど分子量分布が狭いことを示す。
      5. − 生体高分子、天然高分子には、単一の分子量からなる単分散を示すものも多い。
      6. − 分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される。
      7. − 一般に逐次法で合成されたポリマーでは、その比は5~10、連鎖法を用いて合成するとやや狭く2~5程度。
      8. − リビング重合を用いると、得られたポリマーの分子量は著しく狭くなり、スチレンや1,3‐ジエン類のリビングアニオン重合では、1.05 あるいはそれ以下も可能である。
      9. − 数平均分子量(Mn)
        1. • 数平均分子量は、高分子1分子当たりの長さの値、分子の数で平均したものが数平均分子量
        2. • 分子量10万のポリマー1本と分子量100万のポリマー1本とを混合すると、数平均分子量は55万
        3. • 測定は、浸透圧法(数平均分子量でない場合もある) 、
      10. − 重量平均分子量(Mw)
        1. • 重量平均高分子は、高分子1分子当りの長さで正方形の面積を出して合計し、それを全高分子の合計の長さで割った値
        2. • 重量平均分子量は、重量で平均した分子量分子量10万の分子1本(1mol)の重量は10万g、分子量100万では100万gのポリマーを混合した重量平均分子量は、(10万g×10万+100万g×100万)/(10万g+100万g)=91,8万
        3. • 測定は、光散乱法、粘度法(重量平均分子量でない場合もある)
    • ポリエチレン
      1. − 低密度ポリエチレン(LDPE)
        1. • 高圧(2000~3000気圧)の反応管でラジカル反応で重合される
      2. − リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)
        1. • UCCが開発したユニポール・プロセスで触媒を用いた気相重合で生成される
      3. − 中・高密度ポリエチレン(HDPE)
        1. • チーグラーナッタ触媒を用いて気相で重合する
    • ポリプロピレン
      1. − ホモポリマー
        1. • アイソタクチックPP(IPP)で、生成するアタクチックPPを除去したもの
      2. − ランダムコポリマー
        1. • プロピレンに少量のエチレンやブテンを加えて重合したポリマーで、エチレンが20%含まれると、結晶はほとんど消滅する
      3. − ブロックコポリマー
        1. • 多段重合プロセスで製造され、一段目でPPを形成し、2段目以降で、エチレンを原料に加えて重合する
        2. • ブロックPPは、ブロックタイプのPPにすぎず、大部分は、PP,PE,EPRの混合物と考えられている
    • ポリプロピレンの製造プロセス
      1. − 溶液重合プロセス(第1世代)
        1. • 溶剤としてヘキサンやヘプタンなど不活性炭化水素溶媒を用いる
        2. • 重合後、アルコールで触媒を除去し、APPが溶剤に溶けて除去される。後処理工程のコスト負担が大きく、現在は使われていない
      2. − バルク重合プロセス(第2世代)
        1. • 液化プロピレン中で重合、未反応プロピレンの除去が容易で、コストは低いが、高活性触媒が必要になる
      3. − 気相重合プロセス(第3世代)
        1. • プロピレンガス中で重合、ブロック(インパクト)コポリマーの製造ができる
        2. • リアクターは、撹拌槽、流動層など種々の形式が用いられている


      以上